手作りキムチ巡り歩き

ある時からスーパーで売っているキムチを食べられなくなった。いや。食べる気がなくなってしまったと言ったほうが正確かもしれない。

なぜなら各地にある韓国総菜屋で売っている手作りキムチの味に、すっかりとりこになってしまったからだ。

手作りのキムチには、大量生産品の商品にはない個性と、温もりのような味がある。そんなキムチを求めて、ついつい電車に乗り、バスに乗り、はるばる遠方まで出向いてしまう。

関東近郊に限ると、東京なら東上野、三河島。横浜なら横浜橋商店街。川崎なら桜本商店街などに韓国総菜屋が軒を並べている場所がある。そういった場所はおしなべて、在日コリアンの集住地区で、まさに町のオモニ(お母さん)たちが引き継ぎ、こだわってきた味のキムチが店頭に並んでいる。

キムチ好きの方なら、そういった場所を巡り歩き、キムチを買い求め、自分にお気に入りの味を探し出すのも面白いのではないだろうか。

かく言う私もキムチを求めて巡り歩いているうちに、自分の味覚にぴったりくる店を探し出し、以後その店のキムチに魅せられ続けている。桜本商店街近くにあるのんちゃんのキムチ屋さんという店だ。

昔、韓国ではキムヂャンと言って、各家庭でキムチは手作りで作られそれはもっぱら女の仕事だった。日本風に言えば〝お袋の味〟というものだ。各韓国総菜店で売っているキムチには、その〝お袋の味〟がある。

自分にどんぴしゃの〝お袋の味〟に出会った時、やみつきになってしまうことは間違いないだろう。